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アーティストが表現する人物の刊行を記念して、現在二科会を中心に精力的に活動されている、画家:中島敏明さんをお迎えしてお話を伺いました。「elegy」をテーマに独特の油彩タッチで人物画を長年描き続けている画家のご経験と作品について貴重なお話をお届けいたします。

プロフィール
福島県出身。1975年二科展特選。以後、同展二科賞、会員努力賞、総理大臣賞。国内外の展覧会にて招待出品多数。1994、96年文化庁現代美術選抜展推薦。1996年国際美術大賞展大賞。1997年朝日チューリップ展大賞。現代具象展メンバー。二科会会員。千葉県美術会理事。
2006.5/1よりART BOX GALLERYにて個展

絵画との出会い
当時、千葉県鎌ヶ谷市に住んでいたのですが、近所に有名な画家の方がおられました。その先生のアトリエへ遊びに行ったり、スケッチにご一緒させて頂いたり、とても親しくして頂きました。そのような環境から絵の魅力の虜となり、のめり込むようになりました。一度茨城県に越しましたが、その後千葉市に移り住み、別な仕事をもちながらも、画家・山本不二夫先生に師事し、本格的に絵を描き始めました。恩師との出会いと学び
山本先生からは、絵画の技法を細かく学ぶというのではなく、よく先生の姿をじっとみていました。技術的なものより、内面的なものを学ぶ、そばにいるだけで伝わる何かがあります。一度、半紙の上にある砂糖と塩を描き分けなさい、と言われたことがあります。その当時の自分は片方にコーヒーを置いて砂糖を表現し、もう片方には瓜をおいて塩を表現しようと思っておりました。つまり説明的なのですが、今考えるとそれは、「甘い」、「しょっぱい」をどれだけ心で感じて、いかに表現するのかが重要であるのだと思います。今になっては、昔の先生のおしゃっていた言葉がいきいきと蘇ってきては「あれは、こういう意味だったのだ。」と考えさせられます。テーマ:elegy について
私の20代の絵はメルヘン調、30代は裸婦像、そして、40代に入ってからは「elegy」(人生の悲哀の象徴)をテーマに描いております。人間の見えない隠れた部分と内面的な部分を表現したいと模索しております。このテーマを十数年描き続けていたあるとき、Y字路にぶつかりました。Y字の右が「悲」とすると左が「哀」です。その分岐点に立ったときに、愛する妻が亡くなりました。彼女が身をもって「本物のelegy」を教えてくれたように思います。そして、亡くなった妻が、右の辛い「悲しみ」ではなく、左の温かみや優しさのある「哀しみ」に進むように道筋をたててくれたのだと思っています。マチエール、曲線と暖色を用いた技法
私の場合、マチエールに特徴があるのですが、全て偶発的なものではなく、意図的にかなり創り込んでいます。時間はかかりますが、確かなものになります。表現のためには必要なところに、必要なことを施しています。また、優しさを出すためにフォルムは直線より曲線を用います。そして色彩は温かみのある暖色を使います。そうやって、どんなに悲しいものであっても温かさを醸し出せるような作品を創っていきたいと思っています。「哀」に重きをおいた表現の追究
今後も「elegy」をテーマに描き続けると思います。悲哀の「悲」と「哀」の配分は2:8くらいの割合で描いていくでしょう。テーマが深く、どこまでも掘り下げられるので・・・結局は自己満足の世界になるのでしょうか。夢中になって伝えなくも、見てくれる人が少しでも共感してくれれば幸いですね。

二科会で活躍する中島敏明の油彩作品は「elegy」をテーマに独特の人物画の世界を表現しています。鮮やかな色調と大胆なモチーフの構成で、見るものを深いイマジネーションの旅へと引き込んでくれるでしょう。作品一覧
慈愛 参考作品
画面をじっと見つめていると何人もの人がしっかりと抱き合っているように見えてきます。「私にとってあなたは、なくてはならない大切な人」という家族の肖像画のようです。

No.17 \31,500
腕の丸い曲線と温かい色調が特徴的な作品です。男女ふたりの人物が一体化して重なり合う印象深い構図です。

うたた寝 \630,000
画家の使っていたパレットの上に描いた女性裸婦像です。パレットのフォルムに沿うような美しい曲線とブルーの色合いが幻想的な作品です。

アーティストが表現する人物/年鑑
顔・表情・ポーズ・家族・肖像"あるいは心に残る身体表現の印象的なシーンの数々。全てのアーティストが関わるテーマ−「人」のモチーフにした平面・立体作品が一堂に会した作品集。この他、現代日本の絵画Vol.2でもご覧頂けます。

展覧会の初日の午前中からひっきりなしにお客様が来廊され、パーティも大盛況でした。絵のように中島敏明さんは情深く、温かいお人柄なので、多くのファンや関係者がお集まりになりました。中島さんによると、2002年に受賞した総理大臣賞は「私の妻が賞をとったようなものだ。」とおっしゃっていました。今後も亡き夫人が、天国からそっと画家の創作活動を見守っておられることでしょう。

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