写真家になった動機は実はあいまいだった
最初、建築家に憧れていて、大学では建築学科で学びたいと思っていました。そもそも大学受験に失敗したのもありますが、「写真は面白い」という親戚の人の言葉が妙に印象に残っていて、大阪芸大の写真学科に入学しました。ですから、写真を始めた動機はそこまで明確なものではありませんでした。実際に、写真やカメラについての知識も全くありませんでした。在学中は厳しくも良い先生方に恵まれて、課題が与えられると、あまり深く考えないで貪欲に取り組みましたね。卒業後は、東京で広告フォトグラファーのアシスタントを経てコマーシャル写真を中心にプロとしての基本的な技術を学びました。シンプルで力強い写真を求めて
ちょうど30代半ばの頃、コマ−シャルの仕事は順調でしたが、自分の写真を撮っていくのにあたり壁にぶつかりました。もっと語学や本場の写真を学びたかったこともありニューヨークに渡って2年間滞在しました。そこでの経験が自分にとっての財産になったと思っています。数々の有名作家のオリジナルプリントも見れましたし、現地で活躍するアーティストの人たちとの出会いも新鮮でした。そして何より、自分の好きなものがはっきりと見えてきましたね。「分かりやすくて力強い」(simple
& powerful)、そんなアメリカンフォトの源流ともいえる写真のスタイルに影響を受け、自分はそういう写真を撮っていきたいと再認識することができました。自分の伝えたいメッセージが相手にも確実に伝わるパワフルな写真です。今回の個展のテーマ「FORM」について
まとまったスティルライフの写真展は今回が初めてです。身近なものにフォーカスオンした時に見えてくる、かたちの美しさをテーマにしています。余計なものをできるだけそぎ落とした時に見えてくる何か−。このシリーズは、「分かりやすくて力強い」というスタイルの究極を表現しています。例えば、ソラマメやタケノコなどの、素のままでシンプルなモチーフだけで絵になることを発見しました。形容でなく、感嘆される作品を創りたい
ニュ−ヨークの広告等を見ていると思うのですが、ヴィジュアルだけで表現することがいかに重要かというのがわかります。多民族の街では、英語が判らない人にもメッセージが理解されないといけない。見た瞬間に分かってもらえ、説明する言葉が要らない強いヴィジュアルを提示しないといけません。「うわっ!」とか「すごい!」などの感嘆詞が出てくるような、人の心に響くような写真を撮っていきたいですね。
今後は「東京」をテーマに作品発表を考えています
今後も、仕事は大方デジタルで、作品はアナログにこだわって制作を続けていきます。どちらにおいても「これでいい」という到達点はないので、今後もどんどん変化していくと思います。ここ数年、特注で作った6cm×24cmフォーマットのパノラマカメラを使って「東京」をテーマに撮っています。東京は自分が住んでいる街であり、色々な切り口があります。多数の切り口がある分、難しい側面もありますが、いつかまとめて発表していきたいですね。
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