作品集『hotel
rachel』出版にあたって
今までにアートボックスから2册の作品集を出版しました。1997年世界に通用するイラストレーション集「PARADAISE」、2000年永遠の工作少年が贈る「METALOBJETS」です。そして2007年ワイヤー・アート作品集「hotelrachel」が出版されます。架空のホテル「レイチェル」を設定し、そこに生息するワイヤー・ビーナスたちを映像美で表現しました。1990年から女性像を制作し、撮り溜めてきた写真で編集した夢の官能世界です。企画は1997年頃に生まれ出版を目論んだが企画が止まり封印されました。10年間の熟成を待ち発酵され、今年春に出版企画が持ち上がり封印が解かれ解禁されたわけです。アートボックスのきづかあきよし氏はじめスタッフ皆様のお陰で永年の夢であった出版を叶えられたたことを感謝いたします。ワイヤーを使用しての作品制作
真鍮線を使用したワイヤー・アートの無駄のないフォルムはイマジネーションをかきたて、曲面の緊張感が交錯し抜け殻のような面白く不思議な造形世界が広がり気がついたら17年という歳月が過ぎていました。真鍮の金色とハンダの銀色のコンビネーションが好きです。ハンダが熱いコテで溶けていく様子がとてもエロティックです。息を止め念じ、両手でワイヤーを曲げ思い通りの美しい曲線ができた時は満足感を味わえます。空間でデッサンをするように理想的な線を探し出し、3次元で描くように造形する時に快感を感じます。自分とって心地よいオリジナルな素材と出会えてほんとうに幸運だったと思います。ホテル・レイチェルはビーナスの夢を見るか
そもそも、私が金属立体造形を制作し始めたきっかけは、1982年に出合った映画「ブレードランナー」に魅了されインスパイアされたためである。リドリ−・スコット監督とシド・ミードの美術によって作り出された映像世界に感動しました。そして、自身がレプリカントなのか人間なのか苦悩するタイレル社の社長秘書「レイチェル」に魅了されたわけです。この映画の原作はフィリップ・K・ディック原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」で、今回の作品集の副題として「ホテル・レイチェルはビーナスの夢を見るか」としました。作品集はホテルの赤い廊下からエレベータで最上階に上がりホテルエントランスから始まります。様々なセクシャルルームを覗きながら女性たちの棲息する官能美の世界へ誘うというのがたくらみです。4人のメインキャラクターと多数の脇役が登場しますが、読者ひとりひとりの解釈で想像していただけたら嬉しいです。ぜひ作品集を手に取りお楽しみ下さい。ワイヤー・アートとの出会い1990年銀座の牧神画廊で「SEXUAL
ROOM」というテーマで女性の部屋を再現した個展を開きました。その画廊にはガラスの壁があり、そのコーナーをシャワールームに見立て、あたかも少し前に女性がシャワーを浴びていた見えない余韻を表現しようと思い、ハンガーに掛けたキャミソールを制作したのがワイヤーとの出会いです。繊細さ、軽さ、はかなさを表現しようとし削ぎ落し最後には0.9ミリの真鍮ワイヤーに行きつきました。この時から、エレガントでゴージャスなクール・ビューティーシリーズが始まったわけです。
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