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現代作家へのインタビュー第1弾は、日展や日本現代工芸美術家協会において高い評価を受ける染色家・藤川素子さんを迎え、染色家として、自分自身の作品について、染色についての展望など他では決して聞くことのできない貴重なお話を皆様にお届け致します。

プロフィール
広島県立第一高等女学校卒業後、光風会、日展、日本現代工芸美術家協会展へ出品。1980年 日展/特選(88年同)。1987年 日本現代工芸美術家協会/東京都教育委員会賞。日展会員、日本現代工芸美術家協会評議員。ゆめみし主宰。
2004.11/1よりART BOX GALLERYにて個展

染色を始めたきっかけーそれは、母親に連れられたロウケツ染めの教室
何をやっても三日坊主の私が、母親同伴で向かったロウケツ染めの教室。そこで「私にはこれしかない」というものを見つけたような気がしました。それがロウケツ染めでした。染色は他の技法などもありますが、ロウでなければならなかった。サンドウィッチのように色を染めロウを重ね、何度もそれを繰り返していく。一番初めは帯染めをやったのですが、私は人の意見を聞かない方でしたので、そのうちにその教室を出て自分が表現したいものを創り始めました。その作品を見て、周りの方々が現代工芸展や光風会などへの出品を後押しして下さり、そこでの入選ーそれが今の私の染色人生のはじまりとなりました。 数々の助言や指摘に時に屈折し、時にそれが杖となって私を支えていた
私がご指導いただいたのは、染色家の先生ではなく、漆や金工の先生方でした。技法などを教わるのではなく、作品に対する心情など精神的なものを教わりました。その数々の言葉たちは光であり、時には烈風であり、私の大きな心の柱となっていきました。
■辻光典先生(故日展参事)…君の構図は見ない。キレイに染めることしか考えてない。
■高橋節郎先生(日本芸術院会員)…君は反骨精神のカタマリだ。
■蓮田修吾郎先生(日本芸術院会員)…イミテーションと本物の違いを見分ける目を養いたまえ。 人の批評には耳を傾ける。でも、私にはこれしかできない
私の作品の様々なディテールに対して批評をする人は数多くいます。私もそういったことには耳を貸しますが、やはり自分にはもうこれしかできない、と思ってやっていますので、ここを修正したらこうなる、と言われたことの通りにこれまでしてきたことはありません。私は一枚の作品に様々な心を染め込んでいます。それだけに、もう一度同じ作品を創ったり、似た作品を創ることができない。その時に創った作品というのは二度と創れないんです。ですので、私の作品は一つとして同じものはありません。いつか出会った風景、それが遺跡にはあった
パキスタンのモヘンジョダロを見た時、すっと心が入っていくのが分かりました。昔からそこにいたような気さえしました。寒い時期に訪れたのですが、その遺跡を見たら身体がポカポカしてきたんですね。温かくなって私を包んでくれるんです。私はそこの情景を何度となく夢で見ていました。砂漠や退化した遺跡は私の心象風景そのもの。だからと言ってどんな遺跡でもそうであるわけではありません。ペルーなどの遺跡は歯が立ちませんでした。びっしりと石が敷き詰められた遺跡には、心を投影する隙間が全くないんですね。人間の中にある空洞、そして実在する空洞は私にとって同一のもの
1980年代頃の作品に人間や目などが出て来ることについてよく聞かれますが、特別な理由はありません。目や顔は全てを映し出します。衣服から人間の身体が抜け出してもそこにはそのままの形の魂が残っている。私は、空洞とそこにあるもの(実在するもの)というのは同一だと思っています。その頃の作品にはよく人間が現れますが、その女性が遺跡の上へどんどん上昇していくんですね。その女性が上昇しきった姿が『去りて再び』(1992年)という作品にあります。それをきっかけに、その女性は私の作品から姿を消しました。具象や抽象、その境は本当に必要なのでしょうか
私の作品は具象でもありませんし抽象でもありません。具象に近い部分はありますが、それのどちらにもしぼることなどできません。双方が交差している、それが私の作品なのだと思います。具象や抽象などという境は必要なのか、私は自分の作品を批評される際にいつもそのようなことを思ってしまいます。ロウケツ染めには様々なスタイルがありますが、私の場合はロウで細い線を創るのではなく、絵を描いているんです。そして、こういった表現ができるのもロウケツ染めだからこそだと思っています。

日展や現代工芸展では見られないF8号の作品群には、藤川素子が凝縮されています。
遺跡は空を舞い、天体はその下で眠る
私の今回出品した中でもっとも気に入っている作品です。私の作品に出てくる遺跡はすべて私の中に存在するものなので、写真やスケッチなどを必要とすることはありません。そして、そこには必ず入り口があり、私はその入り口に向かって空を飛んで入ることができる。そういうイメージがあります。よく目のレンズ越しに見える情景でないかと言われますが、そうではありません。影になっている部分は宙で、遺跡たちは常に宙を舞っているのです。

古代ロマン F8号
この作品は20年も置いていたものです。色が上手く仕上がらず何度も何度も修復していました。

去りし日の F8号
赤という色が本当は苦手なんです。自分に近い色はやはりブルーですね。この作品の頃は、ロウケツ染めも試行錯誤の上でやっていましいたから、ものすごく感情的。でも、今ではもう創ることができない作品です。

心の旅 F8号
今回の個展に出品する際に、このお地蔵さんが「出してくれ」と言ったんです。その時に思いました。私の創った作品には、ある種の念力がある。お地蔵さんが私に向かってそう訴えた時に初めてそれを確信しました。

藤川素子の染世界/作品集
藤川素子の総傑作を収載した作品集:藤川素子の染世界。抽象と具象が混ざりあう力強い染めの色彩は見るものを引きつけます。

現代日本の衣匠/年鑑
世界を代表するデザイナーから、日本の伝統・文化を甦らせる着物・古布・染色までを一同に収載時を超え、ジャンルを超えて、美を創造するアーティストと作品を一冊に織り込みました。その他、現代日本のクラフトからも作品がご覧頂けます。

今回の個展に合わせた衣裳を召して来廊した藤川素子さんは、作品からイメージした印象通り、まさに異国の旅人でした。藤川さん自身が作品に染め込まれていることがはっきり分かるのと同時に、作品の見方が変わっていくのが分かりました。取材時に偶然現れた金子賢治さん(東京国立近代美術館工芸課長)にも貴重な話を伺うことができ、充実したインタビューになったことを心より感謝いたします。

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