信州の豊かな自然に抱かれて育ち、その自然の美しさを色彩豊かに描く画家、垣内カツアキ氏の展覧会が開催されております。アルプス、八ヶ岳、白樺湖、蓼科の山をいつも身近に感じ、四季折々に魅せる自然の表情を知る垣内氏に、長野ならではの自然の魅力と作品にまつわる興味深いエピソードをお聞きしました。
プロフィール 1935年 長野県辰野町生まれ。1959年 一陽展初入選/同特待賞2回。野間仁根氏に師事。1976年 スペイン美術賞展、他14ヶ国40回以上出品。1982年 渡仏、ル・サロン入選・優秀賞。1997年 私設「伊那アルプス美術館」設立 。個展80回以上。一陽会会員。ル・サロン・ランス芸術家協会永久会員。伊那アルプス美術館主。
信州の自然を描き続けて 生まれ故郷である信州の自然は、高くそびえ立つ山と高原と湖の調和の美しさを感じさせる土地です。長年その大自然と向き合っていますが、四季折々の自然の変化などを見ていると、一時として同じ表情であることはありません。信州の雄大な自然は常に私を魅了してくれて、それはこれからもきっと変わることはないでしょう。 ですが、若かりし頃は、都会に憧れ、立ち並ぶビルを一心不乱に描いていた時代もありました。外の世界を見た時代があったからこそ、郷土に対する愛着がわき、自然を見つめ直すことができたと思います。 人生の契機となった出来事 私が高校2年生の時の父親の突然の死は、私の人生に大きな影響を与えました。菓子屋を営んでいた父の跡を継ぐか、絵を描き続けるか、という選択に迫られました。しかし、残された私と母親と妹4人が生活していく為には、家業を継ぐよりほかなりませんでした。昼間は働き、夜間高校に通いと、時間に追われ、苦しい生活が続きました。しかし、それでも絵を描くことの情熱が消えることはありませんでした。むしろ、絵を描くということが自分にあったからこそ、生きてこれたと言っても過言ではありません。絵に向かえる幸せは高校2年の頃から今も変わらずに想い続け、現在もこうしてキャンバスに向かえる日常に心から感謝しています。 師・野間仁根先生の教え 初出品した上野の展覧会の帰り、思い立って、誰もが知る有名画家、野間先生の自宅のドアを叩きました。突然の若者の訪問に、先生は暖かく迎えて下さいました。本当に若さ故の大胆な行動だったと思いますね。何年間か野間先生の所に通い、自分の描いた絵を見ていただきました。先生は私に「君なりの絵を描きなさい。自由に描け。」というお言葉を下さいました。私はその言葉で、絵を描くことに対しての心が軽くなりました。それは今でも自分の教訓として生きています。 これからの人生 もう70歳を過ぎたので健康に十分留意し、常に描けることの幸せに感謝してまいりたいと思います。絵を描いてこそ、私が生きている証です。私は自分の健康の許せる限り、あまり肩に力を入れず淡々と作品作りを続けていきたいと思っております。
色彩豊かに描き出された信州の風景総計33点。その中から3点をピックアップしました。作品一覧 花と湖 \210,000- 湖は諏訪湖である。右上の雪を頂く山は穂高で、 若い頃から何枚描いてきたか解らない程、多い モチーフで、これからも描き続けていくに違いない状景の一一点である。春に秋に又冬に、 次々に描きたい気持を与えてくれる、自宅から 程近い場所からの作品である。
北アルプスを望む花の丘 \157,500- 北アルプスは3000m級の山々が多く連なる。 紅白の花咲く高台から、白銀に輝く山脈を望む 図で、春の遅い信州の待ち望んだ季節の到来に 心踊らせて描いた記憶がある。
白樺湖秋景 \252,000- 何故か、振り返ってみたら蓼科山も沢山描いてきた。秋の白樺湖からの蓼科山で、この周辺から 描いたものは特に多い。自然湖ではないが、 今ではすっかり山や湖辺の木立や建物と調和 して、描きたい気持をかきたてる。
現代日本の絵画 vol.3 \15,750(税込) 日本を代表する日本画家・洋画家の新作を中心に多彩な表現を展望する、最新の現代絵画の作品集です。見開き2ページに作品、プロフィール、コメントを掲載。
「絵が描けなくなったら人生は終わり」 描くことに、この上ない喜びと幸せを感じている先生がとても印象的でした。 常に自然と向き合い、美をとことん追求する先生だからこそ、作品から 自然の空気感や温かみを感じることができ、自然の美しい表情が描けるのだと思いました。 これからの先生の益々のご活躍を期待しております。
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