ART BOX INJAPAN 現代日本の版画、他に掲載している版画家・金井田英津子さんは、ふとしたきっかけが転じて版画作品が広がった、現在もっとも多忙な版画家の一人である。本の「装幀挿画」という仕事や、これからの版画の可能性について伺ってみました。
Q2.「版画」と「装幀挿画」を手掛ける時の違いを教えて下さい
版画はあくまで創りたいものを創りたい時に創ることにしています。それに比べ本の仕事は、発注者がいて、明確な目的があります。そこが違うとはいえ、私は元々ものを創る動機が外在するタイプなのでテキストからの刺激に反応して制作するのは楽しいです。Q3.版画でしか表現できないものとは何ですか?
オリジナルが、極小のメディアとして複数が同じ存在感で成立している「版」という表現が好きです。タブローのような何処までも個に収斂していくものより社会に向かって開いている感じに安心感を覚えます。
Q4.「版画」を続けている理由などあれば教えて下さい
装幀挿画、演劇宣伝美術、ルポライトなどいろいろ手掛けていますが、版画はいちばん自分の素の部分が出せるものだと思っています。グラフィックデザインをするときも自然に版画の手順に従っています。版画を続けていることに理由があるとすれば、自分の嗜好の確認のためということでしょうか。
Q5.版画家を目指す人達にアドバイスなどお願いします。
内なる志向の赴くままに表現の可能性を広げていけばよいと思います。そして、それを発表し続けることです。私はこれまで自分の作家としての先行きにはっきりしたビジョンや戦略を持たないで来ました。ひたすら創って、出来たら人に見せてを繰り返すばかりだったのです。そんな迂遠なやり方でも時には目が開かれる出会いやうれしいチャンスが訪れることがあり、何とか続けてこられました。「鑑賞者を得てはじめて作品は完成する」との言葉通りだと思います。
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