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現代作家へのインタビュー第5弾は、「和紙」を素材に美しく生き生きとした人形を創りつづける和紙人形作家・緑川和子さんを迎え、自身の作品についてや、これからの挑戦したいこと等、他では決して聞くことのできない貴重なお話を伺いました。

プロフィール
1972年冬島泰三氏に師事。1993年全日本紙人形協会展出展。以降毎年参加。2004年国際展「美と創造の夜明け展」出展。現在「創作和紙人形みどり会」主宰、全日本紙人形協会関東支部長。
2005.1/31より作品集:和紙人形出版を記念しART BOX GALLERYにて個展

母の作ってくれた江戸姉様人形と歌舞伎紙人形との出会い
私が幼い頃、母は千代紙で伝統的な江戸姉様の人形を作ってくれました。また、母は歌舞伎が好きな人でしたので、私をよく連れていってくれました。そういうこともあって、歌舞伎人形に惹かれたんでしょうね。「和紙でつくる歌舞伎人形」の冬島泰三先生に出会ったのは30才後半のことでした。冬島先生に教わるために取得した師範免許
冬島先生に教わるには、まず師範クラスでなければならなかったので、私は急ぎ他の流派の師範免許を取得しました。冬島先生は江戸情緒を母胎とする時代劇映画の監督・脚本家としてご活躍され、映画界を退いた後は歌舞伎の知識を生かして紙人形の制作を始められました。冬島先生は優しい方でしたが、時に厳しい方でもありました。「顔や手足、髪の作り方は自由、只、衣装の色、柄、サイズは変えるな。」自分で研究しないとついていけません。刀、わらじ等々家の近くにあった三船プロの道具部屋にはお世話になりました。先生の遺言がなければ、続けていなかったかもしれない
先生も奥様もたいそう私を可愛がって下さいました。しかし色々あって、引っ越しと同時に人形からは一切離れようと思ったこともありました。ですが、引っ越しした後に先生が倒れられ、私はその時ひどく後悔しました。お見舞いに伺うと、当然のごとく奥様からお叱りを受けました。協会発足の大事な時でしたから。奥様のお言葉を優しく制した先生は「年長者の多い、この会をまとめて行くには、緑川さんは若すぎて、可哀相だ。ただ一つだけ頼みがある。年に一体でもいいから柝の音会の人形を生徒達に教えていって欲しい」先生の最後の言葉に、私はそれだけは守ろうと決意したのです。その後、不思議と人が集まり、再び人形創りを教えるに至るのですが…。面相がないから、逆に人形全体から表情を想像できる
和和紙人形というのは、ほとんど顔が描かれていないのです。面相がないということは、逆に人形全体から表情を想像することができる、ということです。だからこそ、紙で創る人形は、着物や身体のライン(動き)などがとても重要になってきます。私の作品で面相があるのは、歌舞伎ものが大半です。歌舞伎の隈取りは必要ですから。それ以外でも舞踏家など面相が必要なものに限っては描いています。着物の紙は、昔は手描きだった
今は、こういった和紙をおいている所も少なくありませんが、昔は手描きでやっていました。おりがみ会館の小林紙房には冬島先生の描かれた歌舞伎衣装の柄紙が幾つか今も置かれています。柄の大きさも人形の大きさにぴったりと合うようなサイズで刷ってあるので重宝しています。紙でしかできない表現と、紙だからできる表現
例えば、獅子の髪の毛(逆立つように動きのある)は、紙をきざんで動いているように見せているのですが、これも紙でなければできないことなのです。

連獅子 2004年
15年前に創った時、あるお客さんが左の獅子の髪の色がよくないね、と指摘してきたんです。都染めにした方がいい、なんてことも言われました。今回のは、それを踏まえて新たに創ったものです。

おわら風の盆 2004年
民謡ものの中では、これが一番気に入っています。何より、笠を創るのに苦労しましたね。既製品では、しっくりこなかったというのもあります。

和紙人形/作品集
歌舞伎のワンシーンや、日本舞踊、そして日本の懐かしい日常風景など、「和紙」の特製を活かした世界観でまとめあげられた一冊。

現代日本のクラフト/年鑑
人間国宝から現在活躍中の工芸家まで、130名の作家による「美」と「技」の響宴。多彩なジャンルを一同に収載した本書からも作品をご覧頂けます。

万全な体調でないにも関わらず、この本の出版のために新たに作品を仕上げたり、またこの展覧会のためにいろいろと用意したり、そのエネルギーには驚かされます。とても温もりのある緑川さんですが、作品を創り始めると医者の言葉も忘れて夜更かししてしまうほど、この和紙人形創りを生き甲斐としておられるようでした。伝統的な要素を守りながらも、新しい風を吹き込もうとする緑川さんの姿勢は、今後の伝統的文化を守る人たちにも必要なエッセンスなのかもしれません。

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