アーティストが表現する静物・生物の刊行を記念して、ふくろうをモチーフとした童画を中心に描き続けている画家・南 善康さんの絵画展が開催されています。幸せを運ぶといわれるふくろうを、愛を込めて描くことをライフワークにしたいと語る南さんの、絵画への思いをお聞きしました。
プロフィール 1943年東京都生まれ。1967年武蔵野美術大学造形学部卒業。1988年講談社童画グランプリ'88コンテスト・ホルベイン画材賞。1999年越後湯沢全国童画展・奨励賞。2000年 第26回現代童画展・現代童画大賞。 2006.7/3よりART BOX GALLERYにて個展
絵本に憧れた子供時代 絵は子供の頃から好きで、絵本作家や挿絵画家になりたいと思っていました。絵本や雑誌を愛読し、緻密なペン画の伊藤彦造や、いわさきちひろ等に魅了されました。内向的でおしゃべりがへたな子供だったので、絵ばかり描いていたことを憶えています。持ちつづけた童画への情熱 武蔵野美術大学造形学部でグラフィックデザインを学んだ後、広告制作会社に入ってからはイラストレーターとしてデパートのポスター、新聞広告、DMなどのイラストを担当していました。広告の仕事は好きで、60歳近くまで社員として勤めましたが、その間も自分の作品として童画を描いていました。童画の通信教育を受けたこともありますし、コンクールなどにも積極的に出品していました。その頃、知人が海外の本を訳すということで、紹介されて絵を描き、初めての絵本が出版されました。フクロウの家族愛 以前からフクロウが好きで、絵の中に脇役としてよく登場させていました。フクロウの愛らしい、つぶらな瞳に惹かれています。家では猫を飼っているのですが、どこかその目に似ているように思います。フクロウは、家族の絆が非常に強い鳥だそうです。雄がえさを採りに行って、雌が子育てをする。人間と同じように子供を慈しむ姿も魅力的で、絵の中では擬人化して「家族」を表現しています。描くことによって伝えたい思い シマフクロウに魅せられたきっかけは、TVでした。6〜7年前にたまたま観たシマフクロウの特集で、「日本にこんなに大きくて迫力のあるフクロウがいるなんて」と感動したのです。シマフクロウは北海道に生息する世界最大級のフクロウですが、現在日本に100数羽しか棲息していません。明治時代は7000羽位はいたらしいのですが、環境破壊によって絶滅の危機に瀕しているのです。このまま自然が失われていき、シマフクロウがいなくなってはいけない、描くことによって少しでもその素晴らしさを伝え、間接的にでも保護のバックアップができれば、と願っています。 見る人に安らぎを感じて欲しい 私にとって、絵画はもう生活の一部になっています。描くことに忙しく、旅行などにもあまり行けません。シマフクロウのいる北海道の釧路湿原にも、実は2年前に初めて訪れたのです。だから、絵の中の自然の風景は、ほとんど私の空想の中の世界です。ただ、小学校5年生まで住んでいた三重県松坂市は自然環境が美しく残っている土地柄で、山や川、野原に囲まれて毎日遊んでいたので、私の絵にはその記憶が残っているのかもしれませんね。今後も、幸せを運ぶというフクロウを中心に、「見る人にやすらぎや夢を与えるような絵」を、愛を込めて描いていきたいと思っています。
古来より幸せを運ぶと言われているフクロウ達が、自然や家族愛を優しく、愛らしく表現する作品の数々。アクリルを中心に39点が展示されています。作品一覧 島梟の楽園 参考作品 絶滅の危機にある島梟の楽園。画家の願いが込められています。木の枝にとまり、こちらをじっと見ている島梟の凛とした佇まいは、自然の厳しさや強さ、そして偉大さを感じさせます。
優遊 \315,000 3羽のふくろうのひなの前に、ざくろや葡萄などの静物が添えられています。かわいらしいひなの柔らかい質感と果物の瑞々しさが印象的な、落ち着いた華やかさがある作品です。
はな家族 参考作品 家族の暖かさ、優しさが全体から漂ってくる絵です。三日月の下、桜の枝で団欒するふくろうの家族。風車を持った幼いひなを見守る親鳥の暖かい眼差しは、見る者の心も和ませてくれます。
アーティストが表現する 静物・生物/年鑑 さまざまな卓上のドラマ。忘れられないイメージ。息づく生命力、存在感。「SEIBUTSU」では「静物」「生物」をテーマに展開する、現在活躍中のアーティストと作品を紹介しています。
童画ではファンタジックに、毎年取り組んでこられたカレンダー「自然の詩」では細密に、自然を描いてこられた南さん。今後も様々な表現で描き続けたいという南さんの更なるご活躍を期待しております。
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