遠い旅・記憶のかけら
人生は旅に例えられますが、様々な出会と経験の断片が重なり旅の記憶になります。表現の対象は、具体的なものからやがて抽象に及びました。石の中に記憶をとじ込めた化石の標本を収集するように作品をつくっています。いつか、どこかで造られたもののように客観的に眺められたらと思います。
銅版画での表現
銅板という硬質な素材にイメージを置く方法は、感情を抑え、乾いた、少し無機的な感覚を表すのに適しています。木の皮や枯れ葉を漉き込んだ、晒していない和紙に刷り、彩色には着物の型染めを応用したステンシルを使っています。そのような方法をとることにより、最近の風景などのモチーフは、時間と空間にに捕われない、昔の風景のようなノスタルジックな表現を体現することができます。最近手掛けた作品は、以前よりも描き込んでいるため、全体に黒い印象を与えないように、黒ではなく茶色を混ぜてやわらかい印象になるように制作しています。以前に制作した作品と、最近制作した作品の違いを見てもらえばと思います。
今後の活動展開
10代から油絵を描いていましたが、本気でやってみようと、会社勤めをやめて30年ほど前、ヨーロッパに出かけて行きました。決心をして来たものの、大きな不安が鉛色の冬の空の下に広がったことを思い出します。ヨーロッパで銅版画をみたことをきっかけに銅版画を始めました。描きたいイメージだけを頼りに糸を手繰るように、制作を続けてゆくつもりです。
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