日本でのバードカービングの第一人者であり、現在も活躍中の内山 春雄さんの展覧会が開催中となっています。バードカービングにかける熱い思いや、技法についてなど、ここでしか聞けない貴重なお話を伺いました。
プロフィール 1950年 岐阜県生まれ 1987年 ウォード財団主催「バードカービング世界大会」ワールドクラス3位入賞。以後入賞多数 1991年 渡米。11ヶ月間滞在中、各地のコンテストで入賞多数 1997年 日本バードカービング協会を設立 2006年 厚生労働省より「卓越技能賞」授与。【現代の名工】に認定される 2007年7月22日より個展
バードカービングとの出会い 本来は木象嵌(もくぞうがん)師だった私ですが、鳥の絵を描きたいということをきっかけに、バードカービングの世界へ足を踏み入れて、早27年となりました。博物館での仕事や愛鳥保護運動など、様々な形でバードカービングを通じて社会と繋がってきました。鳥の柔らかさに近づく為に 私の作品は羽の一本一本の細部まで、細かく彫り込んでいます。 昔は、羽の表現を彩色の段階で試みたこともありましたが、どうしても鳥の柔らかな感じが出てこないんですね。木は「チュぺロ」という軽く、きめの細かい輸入材を使っています。私はグラインダーを使って制作していますが、この材木はグラインダーとの相性もとても良くて気に入っています。彩色はアクリルで丁寧に行います。細い筆で細かく描いていくんですが、これが実に神経を使う作業です。どれだけ鳥のふわっとした感じを出せるかが、課題ですね。バードカービングの可能性 歴史をたどれば、狩猟の為に作られていたデコイが、バードカービングの元の姿ですが、今では鳥たちの保護の為にも多く使われています。その代表例がアホウドリですね。アホウドリは設置されたデコイを仲間だと思って、集まってきます。その習性を利用して、彼らを安全な場所へ移動させるプロジェクトを私は発案し、携わってきました。 その他にもツルの人工飼育の為に、ツルのハンドパペットを制作し、こちらも大きな成功をおさめることができました。このように、バードカービングは社会と直接的に関わることのできる大きな可能性をもったジャンルだと思っています。 視覚障害者の方々の為に 私は博物館からの仕事を多くもらってきたわけですが、ある時、視覚障害者の方々にも楽しんでもらえないだろうかと思うようになりました。そこで私は触れるバードカービング、「タッチカービング」の世界を確立していくことにしました。人間は視覚から得る情報がおよそ80%も占めるといいます。私の作るバードカービングに触れることで、鳥の形が立体的記憶として残り、頭の中の情報が合致する手助けになればと思っています。博物館のガラスケースの前に触れるレプリカを設置して、鳥の鳴声などと併せて、楽しんでもらうものを作りたいと現在計画中なんですよ。 これからもバードカービングの可能性を追究し続けていきたいですね。
作品一覧 オシドリのペアー \2,520,000- 桜の散る季節はオシドリがツガイを見つける時期としては遅い時期です。この作品には「ラストチャンス」というサブタイトルを付けました お互いが歩み寄る様子がわかるように、桜の花びらで軌跡を表現しました。
コアジサシ \1,302,000- コアジサシの卵は小石とそっくりで、とてもわかりづらい。人間の足跡を台座部分に付けることで、「足元に注意」というメッセージを込めました。ヒナのふわふわした感じを出す為に、植毛を施しています。
ヤマセミと楓 \1,092,000- ヤマセミがずっと描きたいと思っていました。バードカービングを作りつづけたことで、鳥に関する知識が深まり、やっと制作することができた作品です。
作品を作ることで、人々や野生動物などに貢献している内山さんの姿はとても魅力的でした。バードカービングの可能性を追究する姿は制作者であると共に研究者であると感じました。 内山さんのますますの御活躍を期待しております。
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