今回の作品集出版についてはどう思いますか?
13年前に自費出版でイラスト集を2冊出したことがあります。それは、なんでもありで、ナンセンスなものをまとめたものですが、今回はテーマ(「反戦・非戦」)を決めた作品集の出版になりました。ここ10年くらいあたためていたアイデアがようやく形になりました。
War/B全判
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なぜテーマを反戦・非戦にしたのか教えて下さい。
自分の中では、常にインターナショナルに理解される共通項がテーマです。それを拡げていくと「戦争は嫌だ、暴力は反対だ。」ということをおそらく世界中の人が思っているのではないかと考えています。しかし、それに反して世界の情勢がどんどんおかしな方向へ行くようで"矛盾しているようですが、世の中が悪くなればなるほど表現するネタがたくさんあるのが事実です。
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どのような人に読んでもらいたいですか?
読者の想定は特にしていないのですが、インターナショナルに通用するかどうか、海外の反応を見たいですね。
作品集には100点にものぼる作品がまとめてありますが、一番お気に入りのものと、その理由を教えて下さい。
今回の展覧会にも出品した作品の「WAR」(1998年)シリーズです。こちらの作品はフランスのポスター展で賞を頂きました。私はイラストレーターでデザイナーでもあるので、そのバランスが難しいのですが、この作品は「文字」「イラストレーション」「配色」など上手くまとまったので、力強いイメージになったと思います。そういう意味では、私の中でイラストレーションを使ったポスターの理想型として満足しています。
ポスターというメディアについてどうお考えですか?
グラフィックデザイナーにとっては、ポスターは魅力的なメディアだと思います。街角に貼られて、街ゆく人が足をとめて見てくれる。シンプルなヴィジュアルメッセージをストレートに伝える最高の手段だと思います。今後ますますデジタル化が進んでも、残っていくメディアだと思います。私はずっと自主制作でポスターを作っている立場なので、グラフィックデザイナーより、ポスター作家と呼ばれる方が合っているかもしれません。
今後作品にしたいテーマはありますか?
未定です。今回、作品集を出して在庫整理をしてしまったので、今倉庫の中は空っぽです。(笑)
「9.11.2001」シリーズについて教えて下さい。
作品集の中ほどにある「9.11.2001」(2002年)シリーズは自分のなかでも新しい表現方法です。ちょうど事件が起こって2、3ヶ月後で、自分自身も熱く勢いがあった時期で、一作家として表現しなければならないと感じて生まれた作品です。でも、事件の内容上、笑えるものではない。ですから、これまでのコミカルなタッチではなく、作風はメモリアルで「鎮魂」という意味合いが込められています。
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現在の日本の風刺マンガについてはどう思いますか?
私は2003-2004年の2年間、朝日新聞の「私の視点」というコーナーで風刺マンガを発表していました。現状は、ひとコマの風刺マンガは絶滅に瀕しています。仕事の絶対数が少なく、発表の場が限られていますから。それにほとんどが政治マンガコーナーに限られていますね。また、万人が見るということもあって、だんだんと毒がなくなっていってつまらないマンガが増え、それにつれて漫画家自身も少なくなってきています。自分より若い作家がほとんどいないようです。
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今後はどんな展開をしていきたいですか?
基本は変わりません。ポスターとひとコママンガという表現をユーモアやテーマを持って続けていきます。また今後は自分の本や作品を海外に出していきたいです。世の中の人に受け入れられているのかの反応や声をもっと聞きたいです。
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関口尚の作品集:Freeze!について
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関口尚は、戦争・犯罪・暴力など人間の醜い部分をユーモアを交えて風刺しています。万国共通の「笑い」で痛烈に反戦を訴えるそのスタイルは、やみくもに「戦争反対!」と叫ぶより、もっと心の奥の部分でぞくりとさせられます。「Freeze!」はそんなアート漫画の作品集です。※新聞・雑誌などで取り上げられました。文化庁メディア芸術際にて審査員推薦作品としてノミネートされました。
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最近の活動は? ※インタビュー当時の情報です
関口尚:反戦ポスター展2005年6月20日〜7月1日
夢いっぱいのスィーツを描いた、ちょっとお洒落なポストカードブック「おやつの時間」の出版記念展を行います。実際のクッキーの腕前もなかなかの土屋さんがお届けする甘いひとときをご賞味ください
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