審査員/画家 多摩美術大学教授:岡村桂三郎 講評
現代美術家 多摩美術大学教授:海老塚耕一講評
美術評論家 美術ジャーナリスト:藤田一人講評
桂典子
キモカワイイとでも言うのでしょうか。そういうところが面白いです。
こういう作品は、描いていて本人も楽しいでしょう。
そこが、この作品の魅力ですね。
ただ、もう一つこちら側を引き付けてくれるような要素が欲しいですね。
ちゃんと見るとすごく面白いのですが、初めて作品を見た時、実は僕の目には留まりませんでした。
そういうところなのかな?と思うのですが…。つまり、絵画としての全体の見え方です。
そういったところを、意識したら、すご〜く面白くなると思いますよ。
金子絵里
円形の構図、フォルムが面白いですね。それから、緑と赤の組み合わせ、黄色に青い線も良いです。
人物も、どれも一つ一つは、なかなかユニークな表情で面白いのです。
ただ、そういった面白さが、こちら側に見えにくいです。
ポンと目に入ってこない。
少し余計なものが多いのかも知れませんね。
要素をもう少しシンプルに絞り込んで、狙いをもうちょっと明確にした方が良いと思います。
自分が気に入ってる要素を、自分の作品の良さを、明確に出すことを工夫しましょう。
齊藤千尋
色の感覚とフォルムの崩れ具合がとても良いですね。自分の体質として、もともとから有ったものなのでしょうか?とても魅力的ですよ。何かを感じながら描いているのがわかります。
ただ、このままだと、どこかにありがちな油絵になってしまわないかと、心配になってしまいます。
この何か独特な、ちょっと懐かしいような寂しいような感じはとても面白いので、もう少し徹底してみたら如何でしょう。
例えば、意識的に、攻撃的になってみるのも良いかもしれません。
自分を信じて、徹底的にやりきってみてください。
ササキ永利子
ちょっとしたエロティシズムを感じて面白いと思います。
また、形に対する感覚も、鋭敏なのではないでしょうか?何か感じるものがあります。
特に、人物の下半身のあたりは、とても良いと思います。
だけれど、頭部があいまいな気がしますね。もしかしたら、いらないんじゃないかな?
油絵の技法にはあまり詳しくないので、どうしたら良いのか分からないのですが、この鋭敏な感覚が、塗り込んだような完成度を求めたような技法によって、潰れてしまっているようにも感じます。
かえって鈍くなってしまっているのではないでしょうか。
技術的な作業工程の問題のような気がします。何か、そこらへんのところを解決できないでしょうか?
日比谷泰一郎
ともかく、元気があって良いと思います。
めちゃくちゃなんだけど、そこのところを、パワーで押し切ろうとしてますね。
そういうところは期待できるところなのですが、ちょっと要素が多いかな〜。
素材の使い方も、ただもうちからまかせに画面にくっ付けている感がありますね。
まあ、それもよいでしょう。
しかし、力まかせなら、その力の効果が、もっと出てきてほしいものです。
やりたいことを絞り込んだら、もっとパワーが増大すると思うのですが。
つまり、もっと大胆になったら面白いと思います。その為に、もう少し作戦を練ったら良いと思います。
林聖
なかなか面白い作品ですね、これは本質的に作者が持っている独特な感性なのかも知れませんね。
強烈な個性を放っています。
ただ、もう少し大きな絵だと、どんな作品を描くかを見たい気もしますね。
と言うのも、これは本当に必要なのか、この位置で良いのか、と言うようなところが多い気がするのです。
まだ、いろいろと勉強も必要でしょう。
年齢も、まだまだ若いようですし、恐れずにいろいろなものに、挑戦していってもらいたいと思います。
こういうタイプですから、まずは、強靭なデッサン力が必要なのでしょうね。
この無垢な力強さ。いつまでも、忘れないで欲しいですね〜。